カーグッズマガジン編集長の「あれコレ気になるカーグッズ」令和元年記念 昭和なカーグッズを振り返る

2019/06/07

クルマ生活応援マガジン、Car Goods Magazine(カーグッズマガジン)の編集長としてカー用品からアウトドアグッズまで、クルマ生活に関連するあれやこれや気になるカーグッズをピックアップ。記念すべき第一回目は令和元年記念と称して、昭和なカーグッズについてご紹介いたします。

終わったばかりの平成の世をすっ飛ばし、さらに遡る昭和のカーライフ。それは浪漫の時代でもありました。「あんなこといいナ」「できたらいいナ」が、次々と具現化されていく成長過程です。玉石混淆とはいえ、そこにはイケイケどんどん世代ゆえの、独特の輝きがありました。市販初のカー用品専門誌として、カーグッズマガジンが創刊されたのは1999年のこと。20年以上前、かつ20世紀のこととはいえ、それでもすでに平成の世にどっぷり浸かっていた頃合いです。創刊当時ですら、“カーグッズ”という呼称はまだ一般的ではなかったことを考えれば、そこからさらに10年以上遡る昭和のカー用品は遠きにありと言えるでしょう。

揺れるクルマのなか、飲み物の置き場を作るにはどうしたらいいか。家族旅行にそしてデートに、マイカーでのドライブが当たり前になっていく昭和の時代、その大詰めには車内飲食が当然のこととなり、カー用品の存在意義も高まっていきます。今でこそ新車に元々備え付けられるのが当たり前のドリンクホルダーながら、当時はそうは行きません。しかもペットボトルが流通していない時代のことです。車内に持ち込む飲み物は専ら缶か紙カップが一般的であり、揺れる車内で度々発生する“こぼし事変”は、何も血気盛んな青年だけに限らず、幅広いドライバーに共通する悩みでもありました。

ドアに引っ掛ける折りたたみ式や、ワイヤー式の用品が当時から存在していたものの、より理想に燃える先達は、その視線を海外に向けました。クルマの揺れに合わせ、自ら水平を保つメカニズムを搭載するという、当時からしたら目からウロコの製品が海外にはあったのです。

カリプソという製品に、見覚えはないでしょうか? 名前は知らなくても、クルマの動きに合わせてトレイが前後左右に動くユニークなアクションを何となく覚えているかもしれません。記憶にないという方も、昭和のお土産さんでよく見掛けた、不思議な動きをするギミックを連想すると分かりやすいでしょう。当時モノのデッドストック品、そのパッケージを見てみると、生産国表記に誇らしげに刻まれる名はずばり「西ドイツ」。平成の世にはほぼ聞かれなくなったその国名もまた、昭和の趣と言えましょう。

封入オイルとボールベアリングを使ったメカニズムは、電気の力を一切利用しません。それでも車内の揺れに反作用するように、トレイは車体の動きに追従します。そのアクションは実にたおやかで、優雅な動きとも言えました。それでも急ブレーキなどの急制動や小刻みに連続する振動は想定外。許容限度を超えるとドリンクはトレイを滑り落ち、加速度が増してより盛大に飲み物をぶちまけるも、そこはまたご愛敬。それに至る乱暴運転こそ責められるべきで、これはこれでよしとされたのです。

これが平成の世であったなら、あっちゅう間に周囲を囲うヘリを設けたでしょうし、部品点数も減らされたでしょう。生産効率で言えば当然の理屈です。ただ、可変構造のトレイには驚きがあり、そしてスマートさゆえの美学がありました。洗練度で言えば比べ物にはなりませんが、物理的な動きすら楽しみの一つと捉える当時のモノ作り思想には、今の世にない余裕があり、そして浪漫もあります。理詰めの高効率商品が趨勢を占めるなか、現代におけるヒット用品のヒントがここにあるのかもしれません。

文・倉嶋 源

カーチューニング誌での丁稚奉公、新車雑誌での下働きを経て、2007年よりカー用品専門月刊誌・Car Goods Magazine(カーグッズマガジン)の編集長を襲名。雑誌業界歴20年超の大半を通じ、オートアフターマーケット業界に身を捧ぐ。