クルマの楽しみ方みつかる週刊カーライフ

新しい発見がきっとあるカーライフにまつわるコラム集。
毎週更新中!

カテゴリー

シリーズ一覧

  • あれコレ気になる
    カーグッズ
  • カー用品選び方
    指南
  • 365日、
    ドライブ日和
  • カー用品店の楽しみ方、
    付き合い方
  • シリーズ以外の
    コラム
週刊カーライフTOPへ

執筆者一覧

  • カーグッズ
    マガジン編集長
    倉嶋 源
  • レーシング
    ドライバー
    新田 守男
  • カーライフ
    アドバイザー
    鈴木 珠美
  • 様々な分野で
    活躍する
    達人たち
週刊カーライフTOPへ
シリーズ選択
執筆者選択

モータージャーナリスト嶋田智之さんに聞く!
「カー用品の楽しみ方、付き合い方」
今も昔も変わらない僕達のテーマパークのようなもの

嶋田 智之2019/07/19

車生活を楽しんでいるさまざまな“達人”に、カー用品店との思い出やふだんどのようにカー用品を楽しみ、付き合っているのかを綴っていただくリレーコラム。第二回目はモータージャーナリストの嶋田智之さんにご登場していただきました!


2012年に11年オチで手に入れたアルファ166を所有。メンテにはある程度以上の専門性が必要だが、ドリンクホルダーやFMトランスミッターその他、カー用品店で買ったモノも多数装備済み。

オヤジの昔話だと笑い飛ばしてくれてちっとも構わないのだけど、そうそう、1980年代の真ん中辺りの僕達の遊び場は、ファミリーレストランか、さもなければ複合型のカー用品店だった。まだスマホどころかケータイ電話すらなかった時代。インターネットなんて、存在すら知らなかった時代。ライセンスを手にすることができる年齢を超えた男にとっては、クルマがなければ女の子をデートに誘う権利すらなかったような、そんな時代だ。

あの頃は、仲間とツルんで遊ぶには固定電話で連絡を取るか、皆が溜まって澱んでゲラゲラ笑っている場所に行ってみるしか、手がなかった。ファミレスは、バイトの時給の半分ぐらいで何杯もコーヒーをお代わりしながら何時間もネバネバにネバることができるパラダイスだったのだ──お店には迷惑この上ない客だけど。そんなときの話題の大半は、もちろんクルマだ。あいつが何を買っただとかこいつが何に買い換えただとか、そいつがホイールを換えただとか自分はマフラーをどうしたいだとか、オイルは何がよかっただとか……それはもう際限もなく、とりとめもなかった。そしてどこかのタイミングで、必ず誰かが言い出すのだ。「……そろそろ行く?」と。向かう場所は、もちろんカー用品店。もうひとつの“もちろん”は、皆で乗り合わせてじゃなくて、それぞれが自分のクルマで、である。今も大抵はそうだけどカー用品店は駐車場が広いし、そこに来ている誰にともなく自慢の愛車を見せびらかしたいからだ──オンボロの中古車だっていうのに。

僕達はマヌケ面を揃えてカー用品店に入り、いったい何をしていたのか。誰かが何かを買うことももちろんあったけど、ほとんどは冷やかしみたいなものだった。何かおもしろいモノないかなー、とワイワイ騒ぎながらプラプラ見て回ったのだ。ガソリン代を捻り出すのがやっとのコゾーが、さすがに毎週とまではいかなくても月に2?3回は訪ねているのだから、毎回サイフを開くことなんてできっこない。でも、そうして数年間ちょいちょい遊びに行きながらあれやこれや物色していたわけで、考えてみたらいろんなモノを買った。タイヤを換えたこともあればホイールを換えたこともあった。バッテリーもプラグもオイルも、もちろん買った。ステアリングにシフトノブにペダル。カーステにスピーカー。ルームミラー。ドリンクホルダー。灰皿。ワイパーブレード。チェーン。ジャンプコード。エアコンプレッサー。レンチにプライヤー。ワックスにシャンプーに洗車ブラシ。何だかよく解らない方位磁石みたいなヤツに、それから……あと何を買った? ステッカーやレーダー探知機なんて、いくつ買ったか覚えてないくらいだ。あの頃は雑誌とクチコミが情報源の全てだったから、通っているうちに顔を覚えてくれたスタッフの方やピットのメカさん達から色々なことを教えていただいて、ずいぶんと勉強もさせてもらった。もちろん助手席の女の子のための消臭材や芳香剤、クッションとかも何度も買って、そっちはあんまり報われたとはいえなかったけど、それでもカー用品店は常に僕達にとってのテーマパークのような存在であり、この世で最も楽しい遊び場のひとつだった。そしてそんなことを繰り返しながら、僕達はクルマ好きのコゾーからクルマ好きのオヤジへと育ってきたわけだ。

──今? うん。そう問われてあらためて考えてみると、実は意識の中ではあんまり変わってなかったりする。仕事の性質上、真新しい試乗車を預かることが多くて自分のクルマに乗る時間が激減してからは足を運ぶ頻度も相当に減ったし、家庭を持っている仲間達と一緒にというわけにもいかないけれど、欲しいモノがパッと頭に浮かぶとためらいなしにお店に向かい、ついうっかり2時間ぐらい店内を放浪していたりもする。

そういえば半年ぐらい前、こんなことがあった。様々なクルマに数日おきに乗り換えることが多い仕事だから、僕はApple CarPlayに頼れるときはそれに頼りたい。だからコードは常に持ち歩いているわけだが、頭を悩ますのは車内でのiPhoneの置き場。そこで地元に帰ったときに昔よく通ったカー用品店に立ち寄って、僕は持ち歩きしやすいスマホのホルダーを物色していた。すると後ろから「もしかして……シマダ?」と声をかけてくるオヤジがいた。振り返ると、かつて仲間のひとりがいつものファミレスに連れてきて、後に何度か一緒にそのカー用品店にも来たことがある古い知り合いだった。訊ねると、「娘がドアを擦っちゃってさぁ……」ということでコンパウンドを買いに来たらしい。

身も心もだいぶ丸くなったオヤジが肩を寄せ合い、駐車場のクルマの横にしゃがんでふたりでドアを磨いている図というのは途方もなく不気味だし、あんまり見たい光景ではないけれど、当事者達は昔話に花を咲かせながら会ってなかった時間を一気にツメることもできたりして、だいぶ楽しかった。これでいいのだ。

やっぱりカー用品店っていうのは今も僕達にとってのテーマパークのような存在であり、この世で最も楽しい遊び場のひとつ、なのである。きっと、永遠に。

大抵のクルマは中古で買うので、こんなマイナートラブルは日常茶飯事。全く動じたりすることはなく、黙って最初に向かうのは、もちろんカー用品店だ。

文・嶋田智之(しまだともゆき)/モータージャーナリスト

1964年生まれ。エンスー系自動車雑誌『Tipo』の編集長を長く務め、スーパーカー雑誌やフェラーリ専門誌の総編集長を歴任した後、2011年からフリーランスのライター/エディターとして活動開始。自動車系を中心とした各種メディアに寄稿する。またイベントやラジオ番組などではトークのゲストとして声がかかることも多い。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。